ニュージーランドに移住した5人家族のブログ

生活

ニュージーランドは道路コーンの数が世界一なのか、調べてみました

Roy

朝、いつもの道を歩いていたら、オレンジ色のコーンが道路の端にずらりと並んでいました。工事の人はいません。掘り返された跡もありません。ただコーンだけが、点々と何十メートルも続いています。この国に住んでいると、こういう場面に毎週のように出会います。

娘が社会の授業で習ってきたこと

娘がカレッジ(日本では高校にあたります)のソーシャルサイエンスの授業で、こんなことを習ってきたことがあります。

「ニュージーランドは、人口ひとりあたりの道路工事用コーンの数が世界でいちばん多いんだって」

聞いたときは笑ってしまいましたが、同時に妙に納得もしてしまいました。生活の実感とあまりにぴったり合っていたからです。ちなみにこちらでは、あのコーンを road cone(ロードコーン)と呼びます。日本でいうカラーコーン、三角コーンです。

本当なんだろうか。気になって調べてみました。

「世界一」はどこまで本当か

先に結論を書くと、これは「そう言われている」という説であって、検証された統計ではありません。

よく引き合いに出されるのは、NZ Herald に載ったコラムの一文です。

We have more road cones per head of population than any country on earth (probably).
(うちの国は、人口あたりの道路コーンの数が地球上のどの国より多い。たぶん)

最後に (probably)、つまり「たぶん」と付いています。書いた本人も断言していません。

そもそも、国内にコーンが何個あるかを公式に数えている機関がありません。各国を比べたデータも、探した範囲では見つかりませんでした。確かめようのない話なのです。

こちらでよく聞く「人間よりコーンの方が多い」という言い回しも、数字は合いません。コーンは約100万個、人口はおよそ530万人ですから。

数字で見ると、それでも相当な量

とはいえ実際の量は相当なものです。業界誌の記事にこうありました。

  • 交通管理会社に売れるコーンは、業界推計で年間15万個から25万個
  • 国内で使われているのは、非公式におよそ100万個
  • 値段は1個25〜35ドル。紫外線と踏まれ具合で数年しかもたない

人口530万人に対して100万個。ざっと5人にひとつです。

なぜこんなに増えたのか

調べていていちばん面白かったのがここでした。ちゃんと理由があります。

ひとつは COPTTM(臨時交通管理の実施基準)という文書の存在です。これが567ページあり、コーンの置き方を事細かに定めていました。

もうひとつ、規制を所管する Ministry for Regulation(規制省)が公式サイトで3つの理由を挙げています。

  • 訴えられることを過剰に恐れて、必要以上に基準を守ろうとする
  • 工事を計画する会社は渋滞の迷惑を自分で負担しないので、減らす動機がない
  • 何が必要かを知っているのは下請けだけで、元請けには検証できない

同じページには「1994年以降、交通管理の不備で WorkSafe が起訴したのは24件、行政処分は4件だけ」ともありました。恐れているほどには訴えられていないわけです。いまは COPTTM に代わって、NZGTTM(New Zealand Guide to Temporary Traffic Management、臨時交通管理のガイド)への移行が進んでいます。NZTA(ニュージーランド運輸局)がまとめた新しい指針で、決まった置き方をなぞるのではなく、現場ごとの実際の危険に合わせてコーンの数や置き方を決める考え方です。

政府が「コーン通報ホットライン」を作った年

去年、これがちょっとした騒ぎになりました。2025年6月、政府が本当に road cone hotline(コーン通報ホットライン)を開設したのです。コーンが多すぎる現場を市民が通報できる窓口で、国が公式にこの名前を使いました。

項目

数字

通報件数

6月641件 → 7月217件。9月までの累計1,091件

費用

約148,545ドル(1件あたり136ドル15セント)

現場を見た結果

86%は適正。多すぎたのは7.5%、少なすぎたのも2.5%

ウェリントンでは110件の通報に対し、撤去されたコーンは2個。ファンガヌイでは、通報を受けて現場を見直した結果、撤去されたコーンより追加されたコーンのほうが多かったそうです。ホットラインは1年の予定でしたが、2025年12月に前倒しで終了しました。顛末は The Spinoff の記事がよくまとまっています。

極端な例では、ウェリントン近郊の State Highway 58 の6キロ区間に約8年間コーンが置かれ続けていたと報じられました。2014年9月から2024年8月までです。

おわりに

日本にいた頃も、年度末になると工事が増えるなあと思っていました。予算を使い切るためだと言われていて、3月の道路は掘り返されてばかり。でもあれは季節ものでした。4月になれば静かになります。

こちらは違います。年度末も何もなく、いつも、どこかで、何かをやっている。そしてやっていないときも、コーンだけは置いてあるのです。

「世界一」は確かめようのない説だとわかりましたが、がっかりはしませんでした。「なんでこんなに多いんだろう」という素朴な疑問のほうに、567ページの基準書とか元請けと下請けの関係とか、思っていたよりずっと具体的な答えがあったからです。娘が持ち帰ってきた雑学ひとつで、この国の仕組みを少し知ることができました。

とはいえ、今朝のあのコーンたちが何を守っていたのかは、まだわかっていません。